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たとえば

従来のデプスインタビュー

このページで扱うのは、AIインタビューの導入事例ではありません。市場調査、商品開発、UX、顧客体験、医療・専門家調査などで、人が従来から実施しているデプスインタビューを整理したものです。

ページは、従来の進め方、現在行われている領域、工数のため十分に聞けていない領域の順で読めます。社内の人・組織・業務について聞く活動は従来の社内ヒアリング、AIを使って実施された公開事例はAIインタビューの活用事例で分けて扱います。

従来のデプスインタビューは、熟練したインタビュアーが対象者との関係をつくり、回答に応じて問いを組み替えながら、行動の背景、判断基準、感情、例外を深く理解する方法です。一般に、次の工程を人が担います。

  1. 目的を定める調査後に変える意思決定と、まだ分からないことを明確にする
  2. 対象者を設計する条件、人数、除外条件を決め、候補者を募集・選定する
  3. 質問を設計する導入、本題、深掘り、確認の順にインタビューガイドをつくる
  4. 日程を調整する対象者とインタビュアーの時間を合わせ、必要な説明と同意を行う
  5. 一人ずつ聞く発言に応じて追問し、具体的な出来事や判断の背景を確かめる
  6. 記録・分析する録音、書き起こし、メモを統合し、共通点、差、反証を整理する
  7. 判断へつなぐ原発言を根拠に、継続、修正、中止、追加調査を決める

強みは、非言語情報や関係性を読み、その場で仮説を組み替えられることです。一方、対象者が増えるほど、募集、日程調整、実査、記録、分析の工数が積み上がります。そのため、価値が低いから聞かないのではなく、代表者だけ、年一回だけ、重要案件だけに対象や頻度を絞る運用が多くなります。

デプスインタビューは新しい手法ではなく、市場調査、商品開発、UX、顧客体験、医療・専門家調査などで正式な実務として使われています。Greenbookの2025年調査でも、対面・オンラインの個別インタビューとフォーカスグループは主要な定性手法です。一方、定性調査は通常10〜30人程度の小規模・単発調査として設計されるため、全顧客・全案件・全イベントへ繰り返し実施するものではありません。[1][2]

評価記号は、◎が中心的な正式手法、○が比較的よく使われる、△が一部で実施、を示します。

表は左右にスクロールできます。先頭列は固定されています。

領域 主な意思決定 現在の実施 現在の人数・頻度の壁
市場探索・利用実態・顧客ジョブ 市場参入、顧客課題、利用実態 ◎ 消費者インサイト、事業開発、調査会社 10〜30人程度の単発調査になりやすい
セグメンテーション・ペルソナ 誰を狙うか ◎ マーケティング、商品企画 大規模な見直し時に限られ、更新頻度が低い
コンセプト・新商品評価 開発継続、修正、中止 ◎ 商品企画、研究開発、ブランド 案数×対象層だけ調査費と日程が増える
広告・メッセージ・クリエイティブ どの表現を採用するか ◎ ブランド、広告、代理店 制作速度に調査日程が追いつかない
パッケージ・価格・購買理由 購買を動かす要因 ◎ 消費財、小売、価格戦略 店頭・家庭での観察を含めると運営が重い
UXディスカバリー 何を作るか ◎ UXリサーチ、プロダクト、デザイン 対象者募集、日程、実査、分析がボトルネックになる
ユーザビリティ・試作品評価 何が使いにくいか ◎ UXリサーチ、デザイン、開発 少人数か、リリース前の一回だけになりやすい
顧客ジャーニー・ブランド切替 なぜ選び、なぜ離れたか ○ 顧客体験、ブランド、マーケティング 該当者の特定と面談調整が手作業になる
B2Bの受注・失注分析 なぜ勝ち、負けたか ○ 商品マーケティング、営業企画 営業本人には本音が出にくく、全件実施が難しい
解約・継続調査 なぜ離脱したか ○ 顧客体験、カスタマーサクセス、プロダクト 解約件数に比例して面談数が増える
医師・患者の市場調査 治療選択、患者体験、製品戦略 ◎ 製薬、医療機器、専門調査会社 対象者募集、高い謝礼、倫理・個人情報対応が必要
専門家・有識者調査 投資、市場、専門判断 ◎ 戦略、投資、コンサルティング 希少な対象者との関係構築と日程が制約になる
公共政策・社会調査 制度設計、住民理解 ○ 官公庁、自治体、研究機関 調達期間、代表性、説明責任が必要
学術・実装研究 仮説形成、現場理解 ◎ 大学、研究機関 研究倫理、分析工数、予算の制約がある

日本の公開価格例では、フルサービス型のデプスインタビューは1名25万円から、8名・120分のパッケージは約261万〜302万円、医師・患者10名の調査は300万〜400万円程度、低価格型のN1調査でも1名12万円からとされています。これは人による調査の価値を否定するものではなく、全対象者へ反復実施するときに費用と時間が制約になることを示しています。[3][4][5][6]

アンケート、行動ログ、CRM、問い合わせ記録などはあるものの、理由・背景・例外を一人ずつ追う工数がなく、深掘りが省略されやすい場面です。

表は左右にスクロールできます。先頭列は固定されています。

聞く場面 現在の代替 本来確認したいこと 聞けていない主因・主な担当部門
解約・キャンセル直後 理由の単一選択、担当者記録 表面理由と真因、競合、切替条件 件数、退会後の連絡、面談調整。顧客体験、カスタマーサクセス、プロダクト
満足度の低評価者 点数、短い自由記述 何を直せば回復するか 全低評価者へ担当者が追問できない。顧客の声、店舗・サービス運営
購入直後・初回利用後 購入後アンケート 比較、迷い、期待、初期の摩擦 取引件数が多く、鮮度の高いうちに聞けない。EC、ブランド、プロダクト
返品・返金・クレーム後 理由コード、問い合わせログ 商品問題、説明不足、期待差、運用問題 対応後に追加の面談時間を取りにくい。品質、顧客体験、商品企画
サポート解決後 満足度、通話ログ 解決後も残る摩擦、説明理解、再発条件 接点数が多く、深掘りは標本に限られる。コンタクトセンター、顧客体験
利用開始の失敗・未活性 行動ログ、担当者の推測 なぜ進まなかったか、必要な支援 離脱者は会議や面談に参加しにくい。成長施策、カスタマーサクセス、プロダクト
更新辞退・休眠顧客 担当者報告、メール反応 価値、予算、代替、不満、再開条件 関係への配慮と低い応答率。顧客成功、営業企画、CRM
全受注・全失注案件 営業による勝因・失注理由 本当の比較軸、決裁、営業体験、無決定理由 当事者へは本音を伝えにくく、全件を第三者が聞けない。営業企画、商品マーケティング
商談停滞、提案・デモ後 CRMの理由欄、営業メモ 現状維持、社内反対、懸念、関係者別反応 毎商談を第三者が追跡できない。営業責任者、営業支援
パートナー・代理店・販売店 定例会、担当者ヒアリング 顧客反応、競合、売れない理由、制度摩擦 拠点と代理店の数が多い。チャネル営業、事業企画
全プロダクトチームの週次顧客接点 一部の調査担当、サポートログ 課題発見を開発と並走させる 募集、日程、実査、整理。プロダクト、デザイン、UXリサーチ
リリース直後 利用ログ、バグ報告 期待差、理解、回避行動、未報告の摩擦 リリースごとに面談できない。プロダクト、成長施策
AI機能の利用体験 成功率、高評価・低評価ボタン 期待、信頼、役立ち方、失敗の意味 出力と利用状況が毎回異なり、人による評価が追いつかない。AIプロダクト、UXリサーチ
多数の試作案・顧客要望 社内レビュー、要望票、投票数 理解、懸念、採用条件、解くべき仕事 案数と要望数に比例して面談が増える。デザイン、プロダクト、顧客成功
退院・受診後 標準サーベイ、苦情 点数の理由、説明・連携・尊厳の具体的場面 個人情報、弱者保護、面談負荷。医療機関、品質改善
住民サービス利用後 満足度調査、苦情窓口 手続き、情報、アクセシビリティの摩擦 調達、デジタル格差、代表性。自治体、官公庁

工数不足は、需要がないことと同じではありません。Mazeの2025年調査では、800人のプロダクト実務者の55%がユーザーリサーチ需要の増加を回答し、63%が時間・対応余力の制約を最大の課題として挙げました。Product Talkも、継続的な顧客理解では毎週の接点を推奨する一方、対象者募集、時間、学びの統合が実施上の壁になると説明しています。[7][8]

B2Bの受注・失注分析では、営業担当者から切り離された第三者性が重要です。Clozdは、第三者による20〜30分の面談には買い手の20〜30%が応じる場合がある一方、アンケートの応答は5%以下になりやすいと説明しています。これは一律の成果を保証する数値ではありませんが、単一選択の失注理由と第三者面談が異なる情報を生むことを示します。[9]

次は、効率よりも関係形成、保護、専門判断、説明責任を優先する領域です。

  • 診断、治療選択、精神医療、深いトラウマ、グリーフ
  • 未成年、認知・言語上の支援が必要な対象者
  • 稀少な経営者、医師、専門家など、関係構築そのものが価値になる面談
  • 家庭訪問、店頭観察、シャドーイング、エスノグラフィーなど非言語・環境文脈が中心の調査
  • 共同創造、交渉、合意形成など、その場で人の判断と関係調整が必要な対話
  • 法的な供述、証言、本人確認を伴う面談、重大事故・重大品質問題の事実認定

「インタビューを行っているか」だけでなく、対象者数、実際に聞けている人数、頻度、面談者、調整時間、実査時間、分析時間、結果を使う会議まで確認します。

特に、次の差が大きいほど、現在の業務には未充足があると考えられます。

  • 本来聞くべき母集団と、実際に聞けている人数の差
  • 発生のたびに聞くべき業務と、年一回・一部対象者だけに圧縮された頻度の差
  • 担当者やログに残る理由と、第三者が本人から直接聞く理由の差
  • 面談実施から、分析・施策決定までにかかる時間の差
  1. Greenbook “2025 GRIT Insights Practice Report.” 調査レポートPDFを開く
  2. Greenbook “What is the ideal Sample Size in Qualitative Research?” 解説を開く
  3. クロス・マーケティング オフライン調査の料金表。料金表を開く
  4. LINEリサーチ インタビュー調査料金。料金表を開く
  5. スガタリサーチ 医師・患者インタビューの料金と標準日程。案内を開く
  6. MMD研究所 N1デプスインタビューの料金と納期。サービス案内を開く
  7. Maze “The Future of User Research Report 2025.” 調査レポートを開く
  8. Product Talk 継続的な顧客ディスカバリーの実務解説。解説を開く
  9. Clozd Win-loss interviewの応答率と第三者性に関する解説。解説を開く

参考文献の最終確認日は2026年8月24日です。リンク先の内容やURLは、公開元の都合で変更される場合があります。